「廃棄物」の海での 何か など

P-THP   開発者/前田浩熊本大学名誉教授・崇城大学DDS研究所特任教授)

gendai.ismedia.jp/articles/-/50647 P1~4 を 先ほど見まして

 

・・やむを得ない「バクチ」にも それなりの「程度」が もとめられる・・

.

携帯に送って 文字数を少々減らして また 送付

いろいろと参考にしたい部分があるのでは と思われ

じっくり ながめてゆきます

.....................

.

血管は閉鎖系といって出口はなくその中を血液がぐるぐる巡っている

いわばドーナツのようなチューブ

.

抗がん剤

副作用

 毛根 細胞が分裂している…毛が抜ける

 腸管上皮や胃の粘膜も

 骨髄もやられやすい

.

抗がん剤が、がん細胞を殺す量はわかっているので、その量が腫瘍に届くように投与したらマウスはすべて死んだという。

.

人間も同じで、がん細胞が死ぬ量を投与して、人間が耐えられる抗がん剤は存在しない。

.

どんな理屈をこねようとも

理論的に抗がん剤は効かないということ

.

がん細胞のしたたかさ

実はこの40年間で、分子生物学者ががんを研究してきてわかったのは、がんはあまりにも複雑すぎてカオスの世界だということである。

.

  たとえば、がん細胞が毒物に触れると、最初のがん細胞がやられても、次の段階で排出ポンプのようなタンパク質を働かせて、内部に入ってきた毒物を外に放り出してしまう。それだけではない。毒物を分解する酵素を出して毒性を消したり、毒物の分子を変えて毒性をなくしてしまうこともある。

  その他にも、免疫細胞からの攻撃をかわすバリヤーを張ったり、人間の想像力を超えた能力を次々と繰り出しては生き延びようとする。これが薬剤耐性と言われるものである。

  いずれも、生命が数十億年の時間をかけて獲得した能力だろう。

.

抗がん剤とは

患者を生きるか死ぬかの瀬戸際まで追い込んで

運良く腫瘍の方が先に死んでくれればラッキーという

まるでバクチのような「薬」

.

今世紀に入って登場した分子標的薬

ピンポイントで狙うから副作用が少ないといわれたが

皮膚障害のような副作用がけっこうあらわれる

そのうえ「思ったほど効かない」

.

がん細胞が分裂するたびに ターゲットである遺伝子が変異するから

変身したら狙いが定まらない

つまり効かないということ

.

がん細胞にしかないと思っていたそのターゲットが

他の細胞にもあったために

そこも一緒に狙われて副作用があらわれる

.

欠点をクリアしたもの

正常な細胞を殺さず

.

がん細胞にとって致死量にあたる毒物を一気に降り注ぐ抗がん剤

それが前田教授の開発したP-THP

P-THPに使われているピラルビシンは 特許が切れた古い抗がん剤

P-THPのPはポリマーで THPはピラルビシン

つまり ピラルビシンに高分子のポリマーをくっつけたという意味

簡単にいえば P-THPとはこれだけ

.

P-THPが腫瘍に届くまでにはステップ(主に三段階)がある

.

・第1のステップ

腫瘍にだけ集まること

腫瘍にも血管があり やはり正常な血管のように隙間がある

正常血管の隙間をバレーボール大とすれば

腫瘍の血管は25メートルプールほどもある

ピラルビシンを自動車ぐらいの大きさにすれば

正常な血管からは漏れなくなるはず

この自動車ぐらいの大きさにするのが ポリマー

体の中をぐるぐる回っているうちに 巨大な穴が開いている腫瘍の血管から漏れていくので 結果的に腫瘍だけに集まる

同時に 他の組織には漏れないから副作用がない

・第2のステップ

腫瘍血管から漏れたら薬剤がポリマーから離れなければならない

ピラルビシンとポリマーをつないでいる紐は 酸性になると切れるようになっていて 腫瘍の周辺は 腫瘍の廃棄物で酸性の海になっているので簡単に切れる

・第3のステップが難題

ポリマーから離れたピラルビシンが 腫瘍の内部に取り込まれないといけない

がん細胞は常に分裂しているから 大量のエネルギーを必要とするため

トランスポーターという細胞を使って ポンプで汲み上げるように外部のブドウ糖を取り込んでいる

ピラルビシンには ブドウ糖に似た分子がくっついていて がん細胞はピラルビシンをブドウ糖と勘違いして内部に取り込んでしまうのだ

他の抗がん剤でうまくいかないのは このブドウ糖様分子がないから

..

通常の抗がん剤と比較すると腫瘍の内部にその数百倍もの薬剤が取り込まれ まるでトロイの木馬のように入り込んでがん組織を攻撃するのがP-THP

.

分子生物学の権威であるアメリカのロバート・ワインバーグ博士によれば

転移していないがんで死亡するのは約10%

抗がん剤は転移したがんに効かなければ治せないということ

.

従来の抗がん剤は転移したがんには効かなかった

P-THPは3つのステップで転移したがん細胞にも薬剤が届く

.

ピラルビシンという古い抗がん剤にポリマーをくっつけただけ

従来の抗がん剤とは違うものが誕生

.

前田教授が その開発に気づいたのは1980年代

低分子の薬剤を 分子量4万以上の高分子にすると

正常な血管から漏れずに腫瘍の血管だけに集まるのみならずいったん腫瘍の内部に取り込まれると外に漏れなくなることを発見

「EPR効果」として発表

.

もともと前田教授は東北大学で食糧化学を専攻していた。卒業後、フルブライト奨学生としてカリフォルニア大学大学院に留学したが、なんと受け入れ先がたんぱく質の研究室だった。

.

たんぱく質が研究テーマになる

帰国後 恩師である石田名香雄教授(のちの東北大総長)が

放線菌からネオカルチノスタチンという世界で初めてたんぱく質の制癌物質を発見

この研究に携わるようになった

.

ネオカルチノスタチンに世界最強の毒性があることがわかり

ハーバード大学から招聘を受け ファーバー癌研究所の研究員としてアメリカに渡る

.

シドニー・ファーバー博士は化学療法の父とも言われがん治療の世界ではカリスマ的な存在

前田教授はこのファーバー博士に師事

帰国後 様々な事情により熊本大学に移る

.

ここでもネオカルチノスタチンを研究

これを高分子につないだら腎臓から漏れなくなるのではないかと考え

カーワックスに使われるポリマーにつないだ

これを油性の造影剤に溶かして 動脈から肝臓のそばで放出すると

見事に肝臓の腫瘍に集まった

これが後に肝臓がんの治療薬として承認される世界初の高分子型抗がん剤「スマンクス」

.

前田教授が スマンクスに続いて研究していたのがP-THPだった.

80年代、副作用が強くて効かない化学療法の限界をブレイクスルーするために、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)という概念が生まれた。抗がん剤をピンポイントで腫瘍に届けるシステムである。

.

前田教授もこのDDSを研究していて、メルシャン株式会社(ワインメーカーだが、豊富な発酵技術やバイオテクノロジーを利用して医薬品などを開発していた)に研究用の薬剤の提供を申し出たら、たまたまピラルビシンだったという。腫瘍内部に取り込まれやすいことが分かったのは後のことである。

 

.....................................................

 

(メルシャン)  発酵   小泉武夫