2016年6月4日 19時53分の記事 |
土壌伝播蠕虫感染症について (ファクトシート) 厚労省検疫所 2016年3月 WHO ( 原文[英語]へのリンク) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 《フィラリア感染症》 〈リンパ系フィラリア症(象皮病)とメジナ虫病(ギニア虫症)〉 象皮病は,主に糸状虫(フィラリア)であるバンクロフト糸状虫で起こる慢性感染症,リンパ系フィラリア症(LF: lymphatic filariasis)の合併症であり,罹患すると患者には一見してわかる重篤な変化が現れる.また,メジナ虫症は糸状虫によく似た寄生虫,メジナ虫(ギニア虫)によって発症する慢性感染症である. リンパ系フィラリア症とメジナ虫症は「古代」から存在し 現在 特定の地域の「公衆衛生の大きな問題」となっている それらの「病気の対策」は 「土壌伝播性蠕虫(STH)感染症」や「住血吸虫症」に比べて 「ずいぶん進んでいる」 リンパ系フィラリア症に対する集団薬剤投与の結果 その感染症の「排除」は「現実的なものになりつつある」 メジナ虫症については根絶に限りなく近い状態になっている.ここで「排除」と「根絶」は違う意味で使っていることを述べておく.排除とは感染症が伝播しない程度まで有病率が下がっているが,公衆衛生対策を続ける必要がある状態を指す.根絶とは公衆衛生対策を中止しても感染症が自然発生しない状態を指す.なお,現在までに根絶された病気は天然痘のみである. P65 リンパ系フィラリアの古い記録として,腕や脚が腫れている紀元前2000年のエジプト王メントホテップ2世の像や,ペルシャ人医師アビセンナ(イブン・シーナー,981~1037年)による記述がある.アビセンナは,それ以前のギリシャ人医師やローマ人医師と同じように,リンパ系フィラリア症とハンセン病を区別していた. 現在,リンパ系フィラリア症の患者は世界で1億人を数え,その大部分はインド,東南アジア,アフリカのサハラ以南の最貧困層の人々である.ただし,太平洋の島々やアメリカ大陸の熱帯地域の一部(特にハイチ,ドミニカ,ブラジル北東部)にも多数の患者がいる. リンパ系フィラリア症の9割を占めるバンクロフト糸状虫の成虫(残りの1割はブルギア属である)はヒトの腿のつけね(鼠径部)や生殖器のリンパ系に寄生する(リンパ管は血管の隣を平行に走り,よく似た構造をもち,最終的に血管に合流する).成虫の雌は体長が長いもので10cm程度あり,「エンジェルヘアー」や「カッペリーニ」と呼ばれる非常に細いパスタが螺旋状になったような形をしている. 成虫がリンパ系で成長するようになった経緯やその理由は明らかではない.しかし,リンパ系には免疫系の抗体や免疫細胞が豊富に存在するため,ヒトにとって異物である病原体が寄生するには最も適さない場所といえる.それにもかかわらず糸状虫の成虫が数年間もリンパ系に寄生し続けることは極めて不思議なことである. STHや住血吸虫と同じように,糸状虫の雌は交配後に卵殻に包まれた大量の仔虫(しちゅう)を産む.ただしバンクロフト糸状虫の仔虫は卵型ではなく,体長約0.25mmの糸状で,成虫をそのまま小さくした形で産まれる.このミクロフィラリアと呼ばれる仔虫は血液中に移動した後,成長に適した雌の蚊がヒトを刺して血を吸うときに蚊に取り込まれる. P66~8 蚊が媒介することも含め バンクロフト糸状虫の基本的生活環を明らかにしたのは 「現代熱帯医学の父」パトリック・マンソン卿で 1877年のこと 蚊に取り込まれたミクロフィラリアは成長し,蚊の胃壁を通り抜け,10~12日後にはヒトへの感染力をもつ幼虫になる.そして蚊がヒトの血を吸う際にヒトが感染する.アフリカのサハラ以南などでは,マラリアを伝播する蚊がリンパ系フィラリア症も伝播する.ただしバンクロフト糸状虫を伝播する蚊の種類はマラリアほど限定されておらず,複数の種類の蚊が幼虫の宿主になっている.蚊の口吻に移動した幼虫はヒトの皮膚を通り抜けることができるが,蚊が血を吸った部分から侵入すると考えられている.その後,幼虫は1か月かけて最終的な寄生場所であるリンパ系に移動して成虫になる.成虫の生存期間は長く,8年以上に及ぶことが多い.-Rajan,2005 無脊椎動物としては驚異的な年数だが 寄生虫としては珍しいことではない 寄生虫の寿命は 寄生しない「自由生活性」の同種の生物に比べて長い傾向があるが その理由はいまだ謎 他 バンクロフト糸状虫の生活史と発症する病気には いくつかの謎がある ◆謎のひとつ ミクロフィラリアが1日の一定時間のみ血液中に現れるという現象…蚊が最も活発に活動する夜間の時間帯に感染者の血液中に現れる ミクロフィラリアがちょうど午後10時から午前4時に現れたという例もある (以前は診断のために真夜中の診療を行なった) 他の顧みられない熱帯病(NTDs)と同様に,リンパ系フィラリア症についても十分に研究されているとは言えず,ミクロフィラリアの概日リズムに合わせていることを示唆するものである. ◆もうひとつの謎 宿主であるヒトの抗体と免疫攻撃細胞が多数存在する場所で どうやってバンクロフト糸状虫の成虫が8年以上も生き続けるか 免疫からの攻撃を免れるしくみはまだよくわかっていないが,成虫が何らかの方法でヒトの免疫系に作用し,自身の存在を宿主が受け入れるようにしている可能性を示すデータが報告されている. ◆症状が全く見られない状態から 外見が大きく変化する象皮病の状態まで病状が進行する過程についても十分に明らかにされてはいない 症状が現れず,合併症もないままの患者もいるため,病気の進行はさらに複雑な謎である. これまでの研究からは,外見の変化のきっかけはバンクロフト糸状虫の成虫が寄生しているリンパ管の拡張作用だと考えられている.-Addiss and Kumaraswami,2001 リンパ管の拡張(リンパ管拡張症)は成虫がリンパ管を塞ぐことで起こる場合もあるが,リンパ管が塞がれない場合もある.リンパ管拡張症になっても症状が見られないことが多く,鼠径部に超音波検査装置を当てて初めて見つかることもある.超音波検査をすると,拡張したリンパ管内でくねくねと動く寄生虫が見えることが多い.この「フィラリアダンス」は,フィラリアに感染したことを示すものであり,リンパ系フィラリア症のエンデミックが起きている地域の子どもや若者が感染したことを知る最初の兆候でもある. 感染で起きたリンパ管拡張症では最終的に,糸状虫が寿命を迎え死んでいく.リンパ系フィラリア症のエンデミックが起きている村で,幼くして感染した場合,思春期になるころには糸状虫が死に始めることになる. ただし 細菌感染やウイルス感染などの感染症と 異なる点がある 細菌感染やウイルス感染では,宿主の免疫応答や医師が投与する抗微生物薬で,感染症の原因である病原体が死滅することが望まれる. しかしリンパ管拡張症の場合,思春期の子どものリンパ系内で糸状虫の成虫が死滅することは必ずしも良いことではないのである.死んだ寄生虫や死にかけている寄生虫が免疫からの攻撃を免れる力を失うため,ヒトの免疫応答が刺激され,サイトカインや炎症メディエーターが次々と放出される.そのためサイトカインストーム(サイトカインの過剰産生)が起こり,患者が発熱して,リンパ系が腫大する.同時に,寄生虫自体が細菌の発生源となって細菌の二次感染も起こる. (一部の寄生糸状虫は 生まれつき細胞内共生細菌に感染している) 現時点では,リンパ系フィラリア症は,寄生虫が死ぬことで新たな炎症が起こるとともに細菌感染も起こると考えられている.そしてこれ以降,さらに症状が進み,象皮病の特徴であるリンパ系と生殖器の変形が起こる.(Addiss and Brady,2001 / Simonsen,2002) ~P71 リンパ系フィラリア症で死亡することはほとんどないが 若い生産年齢世代に与えるダメージは大きい 農業従事者は資産が少ないため 熱発作で動けなくなったり 仕事を辞めざるを得なくなったり と 大きな打撃となる ガーナの北部では 一般に農業の繁忙期である雨季に急性リンパ管炎のために働けなくなる患者が増加する エンデミックが起きている地域では 動かなくてもできる仕事に変わるなど 転職が一般に行われている. P71 スティーブン・ホーキングの父親 フランク・ホーキングはリンパ系フィラリア症を研究する寄生虫学者で 対策方法の開発のために世界各地で研究していた フランク・ホーキングは1950~1960年代に,ジエチルカルバマジン(DEC: diethylcarbamazine)など,バンクロフト糸状虫をターゲットとした医薬品の開発と試験に多大な貢献をした. (フランク・ホーキングの業績-Hawking et al.,1950 / Hawking,1955 / Hawkng,1958) フランク・ホーキングらは,DECがバンクロフト糸状虫のミクロフィラリアに高い効果を示す一方で,成虫にはあまり効かないことを明らかにした.リンパ系フィラリア症のあらゆる症状は成虫が原因であり,ミクロフィラリアではない. (にもかかわらず DECは投与される) P73 Forgotten People,Forgotten Diseases 『顧みられない熱帯病 グローバルヘルスへの挑戦』2015 ピーター J ホッテズ 著 / 北潔 監訳 / BT スリングスビー 鹿角契 訳 * 先週? リンパ浮腫の方が‥ (因の一つは 子宮系の手術で片足のリンパ管が切断されたため だったか)‥‥‥‥‥極細のリンパ管を探し出し 静脈に繋げる手術をした というシーン * 2夜 外を歩いていて‥とあるポイントを過ぎたあたりで 急激に両脚に痒みが走り その後 両内腿-皮膚近くの毛細血管のざわつきを確認 また ここ数日睡眠中?虫刺されが やや 激しく ‥蚊なのか ダニなのか 何なのか 内外の虫を思うのは 今日に始まったことではない‥ 何かの折々にみつめていた 今 全身にあるかもしれない痒み‥ 「ピン 」でもなければ 「チャン 」でもなく 「キョ 」をみつめる ‥みきわめる 集中 中 といったところか じっくり |