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底を抜く 屋上から落とす 類感呪法

何かと器を割る(ばらまく)・・さまざまな説がありそうですが 

「胞衣納めの故事・慣習」のほうからの解釈を (のこした)手持ちの書から

 

 

…『胞衣えなの生命いのち』1999 より…    「出産と土器破壊」甑落とし

「難産の時は、押し桶を出し、幾度も底をぬくべし」『懐妊着帯之事』

押桶を子宮・産道に見立てた類感呪術であろう と

 

押桶の底を抜くのが 嬰児を母胎からおろす呪術であることは 間違いない

また 胞衣をおろすため 桶を屋根の上から落とす呪術もおこなう

後者と同様の目的のため、大原から取り寄せた甑を落とすことは、すでに12世紀になされていた。 45

指摘しておくべきいくつかの点

甑の呪法が押桶呪法に変化した理由

産前後の水洗用に桶を多く使うようになり 胞衣納めのシステムに桶が入り込んできたのだろう

焼きものと桶の混用は12世紀になってから始まったようだが その段階では主容器は焼きもののほう

(のち近世にいたり重点が移ってゆく) 45

 

『懐妊帯書伝記』1669成立/伊藤幸/近世前期の小笠原流故実家

幸氏の説明において 甑・押桶の底抜きと甑・押桶の転落の両呪法の関連があいまい

第一に、甑の代わりに押桶を使うのだとすれば、古くは難産のときに甑またはその他の焼きものの底を抜く呪法があってもよかった。今のところその例を探しあてていないが、幸氏はその旧例の存在を示唆している。

第二に、甑・押桶の底を抜く安産呪法と、甑・押桶を屋上から落とす胞衣下ろし呪法は、子宮・産道からの脱出が困難な胎内物の下ろし呪法という点で等しい。嬰児を脱出させるためにも、胞衣を脱出させるためにも、胞衣を脱出させるためにも、おなじ呪法を使ってもかまわないはずではないか。

ただし嬰児を胎内から出す類感呪法としては、甑・桶を屋根から落とすのは乱暴に過ぎるかも知れない。いずれ二つの呪法は起源において関係があるのではないか、という疑問が消し難い。

 

安徳天皇恒明親王のときの甑落としの記事によって判断すると、甑を高所から落とすこともさりながら、甑の破壊にかなりの重きが置かれているように見える。想像するに、甑の屋上からの落下を胞衣の産道よりの降下と類比する呪術は、子宮・産道に見立てた甑の出口を開くためにこれを破壊する呪術から派生したのではないか。

 

甑落としと同根と思われる呪法の図が彦火火出見尊絵巻』(1200年前後)に描かれている 46

この場合 土器の破壊は胞衣下ろしの呪法ではなく 安産の呪法と解釈するほかない。

…『胞衣えなの生命いのち』中村禎里

 

 

 メモ  同書 埋甕と胞衣   胞衣容器か死産児・死亡嬰幼児葬器か 163~