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ショカン的空間

プログラムされた細胞の死

 

非再生系細胞と再生系細胞

再生系の細胞では生命維持のためにアポトーシスがあり、細胞の置き換えが行われているのに対し、非再生系の細胞にはそのような役割はありません。 51

    *

血液中の血球細胞(赤血球 リンパ球 血小板)は
骨髄にある造血幹細胞から分化してつくられていく

それぞれ特定の機能を持った血球細胞になる一歩手前の状態で
常に余分に用意されていることがわかっている

たとえば赤血球の場合 造血幹細胞から分化した赤芽球という細胞が待機しているが 多くは赤血球になることなく アポトーシスにより消去されている 40

身体の中の組織や臓器で どれくらいの細胞を維持すべきかは
多くの場合 特定のホルモンの量に依存して決定されていて

赤血球の場合 赤芽球から赤血球に分化する量はエリスロポエチンというホルモンによってコントロールされている

大量に出血したときにエリスロポエチンの量を調べてみると
急激に増えていることがわかる

非常事態に備えて赤芽球を多めに用意しておき
すぐ増産して対処できるようにしているのだ

怪我をした際に 傷口から透明な体液が出てくる
…血を止めるために出てくる血小板

血小板には細胞を増殖させる因子となるホルモンを放出する役割もあり 傷口付近の皮膚細胞は そのホルモンに反応して増殖を始める

  細胞は分裂して増殖しますから、新しくできる細胞は必ず2個、4個、8個、16個、32個……と「2のn乗個」になります。ちょうど傷口をぴったり埋める数だけ細胞を増やすというわけにはいきません。
  ではどうするのかと言えば、やはりちょっと多めに新しい細胞をつくるのです。傷が直る際に皮膚が盛り上がってふさがるのはこのためで、その後、不要な分がアポトーシスによって消去され、もとの皮膚の形に落ち着いていきます。 42


ホルモンの分泌とアポトーシス

温度変化 食事による血中の糖分(グルコース)の上昇といった変化が起こると その変化に対応して内部環境をもとに戻そうとする

そのように 身体を一定の状態に維持しようとする性質は
ホメオスタシス(恒常性)」と呼ばれる

ホメオスタシスを保つために中心的な役割を果たしている
「ホルモン」

ホルモンの分泌とアポトーシスによる生体維持の間には深い関わりがある

ホルモンの量によって細胞がその数を増やしたり減らしたりする現象は さまざまなシーンで見られる 42

よく取り上げられるケース…去勢したラットの前立腺萎縮の例

  ラットを去勢すると、前立腺細胞は一週間以内におよそ85%が死滅します。これは、前立腺の細胞が男性ホルモンであるアンドロゲンに依存して増殖しているためです。去勢によってアンドロゲン量が減少し、減った分だけ細胞に増殖刺激が伝わらなくなって、アポトーシスが誘発されるのです。
  前立腺ガンの治療では、睾丸を摘出する手術を行う場合があります。これは前立腺のガン細胞がアンドロゲンによって増殖するためで、アンドロゲンの供給を絶つことによってアポトーシスを誘導し、ガンを退縮させることを目的としているのです。 43

ぜんそくやアレルギーに対してステロイドホルモンが使われることと アポトーシスとの関わり

  ぜんそくやアレルギーは身体に過剰な免疫反応が起こることによる病気ですから、症状を抑えるには免疫反応に関わっているリンパ球の働きを抑制することが必要となります。つまり、リンパ球のアポトーシスを促進し、数を減らせばよいわけです。そこで登場するのが、ステロイドホルモン。
  もっともこの治療法には、多くのリンパ球がステロイドホルモンによって死滅してしまうために免疫力が落ち、細菌やウイルスに感染しやすくなるというデメリットがあります。ステロイドホルモンが処方される際、同時に抗生物質が出るのはこのためです。

ホルモンと細胞量の関係で最もわかりやすい例は
人間の体の老化現象に見出すことができる

老化により性ホルモンの分泌は少なくなっていき それに伴い ホルモンの量によって細胞数がコントロールされている臓器は小さくなる

細胞増殖によって補給される細胞よりも アポトーシスによって死んでいく細胞のほうが多くなっていく(身体が徐々に小さくなっていく) 44


アポトーシスによる異常細胞の除去

ウイルス感染により発症する インフルエンザやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)

・一度感染すると放置していては治らないAIDS(後天性免疫不全症候群
・ある期間が経過すると治癒するインフルエンザ

そのような違い

細胞を溶解させる溶解性ウイルスに感染した場合
細胞は機械的に破壊されてネクローシスを起こして死滅

細胞のDNAに組み込まれた後 細胞のアポトーシスを抑制して
そのなかで生きながらえるHIVのようなものもある

インフルエンザウイルスに感染した細胞は
アポトーシスによって体内から消去されていく

  細胞には、DNAに異常が発生したときに、それを修復する能力が備わっています。しかし、ウイルスがDNAに入り込んでしまうと、それを取り除いてもとに戻すのは非常に難しいのです。悪質な異常を起こした細胞は、可能な限りまるごと除去してしまうのが生体にとって最も安全な方法と言えます。
  また、人間の身体のなかでは、日常的にぽつぽつとガン細胞ができています。しかし、すべてのガン細胞が増殖し、ガンと診断されるまでに至るわけではありません。
  では、一度できてしまったガン細胞の多くがどうなるのかというと、やはりアポトーシスによって死んでいくのです。

「異常をきたした細胞をアポトーシスによって死滅させ、新たな細胞に置き換える仕組みは、非常に理にかなった修復機構であると言えます」  46


アポトーシスには「制御」と「防御」の役割がある

アポトーシスとは「不必要な細胞が自ら死ぬことで 固体の生命を維持する」機能として考えることができる

「何のために細胞が死ぬのか」という役割などを個別のケースで見ていくとそれぞれ異なる現象のようにも見えるが 細胞社会の中で役割を果たし終えたり 異常になったりしたときに自らプログラムを発動して死んでいくという共通点がある 47

アポトーシスの役割 大きく分けて二つ
・細胞の増殖や分化と同様 本来的に備わった基本機能として固体の完全性を保つ「生体制御」の役割
・ウイルスやバクテリア ガン細胞といった内外の敵が現れたとき 異常をきたした細胞をアポトーシスの発動によって消去する 生体防御の役割 48

    *

…顕微鏡の向こうに見えた「細胞の自殺」…

1972年 スコットランドに留学していた病理学者
J・F・カーは論文を一本発表した

  病変を起こした組織の切片を顕微鏡で観察している最中、カーはプレパラートの上に不思議な光景を見たのです。それは、死にゆく細胞の様子でした。
  その細胞は、彼が知っている細胞の死に方――膨らみ、破裂して死を迎える細胞の壊死=ネクローシス(necrosis)――とは、まったく異なる姿を示していました。正常な細胞と比べて少し小さく、一部は小片となった、見慣れない像。しかもその像は一つではなく、いくつも見て取ることができる。
  カーはその細胞死の観察結果から、細胞が自ら一定のプロセスを経て死んでいく、壊死とは別の「死に方」があるのではないかと考えました。そして、その「死に方」をアポトーシス(apoptosis)と名づけ、論文にまとめたのです。  16

  医学的な現象は、ギリシャ語で名前をつけることが慣例となっています。ギリシャ語で“apo”は「離れる」、“ptosis”は「落ちる」という意味。英語で言えば、“falling off”です。カーは、細胞の小片が散る様を、秋に木の葉が落ちる様子になぞらえたのでしう。
  ユニークなことに、カーは論文のなかで apoptosisの発音にまで「セカンドpはサイレントで、アクセントはtに」と細かく注文をつけています。普通に読むと「エイ(ア)ポプトーシス」となるところを、「アポトーシス」と呼ぶのはこのためです。
  カーが論文を発表するまで、細胞の「死に方」には分類が存在していませんでした。細胞死は壊死という言葉で一括りにされ、誰もそのことに疑問を挟まなかったのです。 16

    *

1980年代末 細胞の死に関する文献に当たり始めた

  当時はまだC・エレガンスのゲノム解析もおそらく終わっていなかったわけですが、ともあれ、私はカーの論文にたどり着き、“apoptosis”という言葉と出合ったのです。
  まず唸ったのは、「木の葉が落ちる」というウイットに富んだネーミング。こと科学の分野でも、長く残り親しまれるネーミングは示唆に富んでいるものなのです。細胞の終焉を落ち葉になぞらえつつ、「マイトーシス(細胞分裂)」「ネクローシス(壊死)」といった古くからある言葉と語尾をそろえてあり、うまく考えたと感心したものです。
  何より、細胞死といえばすべて「壊死」で片づけられていたなか、遺伝子に死がプログラムされているのではないかという考え方は、非常に新鮮に映りました。
  私がそこから得たのは、細胞が死にゆくプロセスがあらかじめプログラムされたものならば、それがどう制御されているかを解明することが重要なのではないかという着想でした。 64

その頃は“apoptosis”という言葉がまだ知られておらず
日本でどう表記するかも決まっていなかった

「壊死」と訳すことにならい 「自滅死」「自爆死」「自死」などと日本語をあてる案もあったが 原著論文の「セカンドpをサイレントに アクセントはtに」という指定に従って「アポトーシス」と発音・表記しようということになったという経緯がある 65


「災害に備えて」さまざまな缶詰を備蓄
消費期限を迎え 廃棄 入れ換え…

その「古いものを消去する」仕組みを担保しているのが
アポトーシス  68

免疫細胞は遺伝子の組み換えによってランダムにつくられるため なかには有用な抗体をつくり出せないものや 自己(自分の生体成分)に対する抗体をつくってしまうものもある

  自分自身に対する抗体をつくってしまう免疫細胞は人体にとって危険ですから、血液中に出てくる前に完全に除去しなくてはなりません。これを可能にしているのも、アポトーシスなのです。 69
  免疫細胞は骨髄でその前身となる細胞が生まれると、血液に乗って胸腺に運ばれ、そこで成熟するという過程を経ています。このとき、胸腺のなかではストローマ細胞という“教官”が「あなたは死になさい」「あなたは大丈夫ですよ」というように“教育(エデュケーション)”を行います。
  この“教育”により、非自己を認識できないものや自己抗体をつくるようなものに死のシグナルを送り、アポトーシスを起こさせることで免疫システムは維持されているのです。“教育”の過程で、およそ95%もの免疫細胞が死滅すると言われていることからも、免疫システムにおいてアポトーシスがいかに重要な役割を果たしているかを感じ取ることができるでしょう。

免疫細胞への“教育”がうまくいかず、自己抗体をつくるものが血液中に流れてしまうと 重病になる

顔に蝶形の赤斑が出る全身性エリテマトーデスや 関節リウマチなどは「膠原病」と総称される自己免疫疾患の一つ 70

『ヒトはどうして死ぬのか』死の遺伝子の謎 2010

田沼靖一
1952年山梨県生まれ/東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了

米国国立衛生研究所(NIH)研究員等を経て東京理科大学薬学部教授/専門は生化学・分子生物学/同大ゲノム創薬研究センター長


高校生になる頃には野球選手になる夢はついえ
バレーボール部 生物部とかけもちする生活

いまでも覚えているのは、大学の先生が寄稿した科学雑誌を見て、文化祭のテーマとしてメダカの性転換に挑戦したことです。

その記事には容器のなかに「 性」ホルモン「  」を入れ
「 化」する手順が書かれていた

薬局に行って…店主から
「君が打つんじゃないよね?」と尋ねられた 4『ヒトはどうして死ぬのか』

 

 

「  系の  」では「    」のために 「    」があり・・

という 響き があるようす

 

10.3 自己貪食胞
lysosome:一群の加水分解酵素を含み消化分解作用をもつ小器官

じしょく‐さよう【自食作用】⇒ オートファジー

 

   * * *

 

Wikipediaは?


・間質細胞 Stromal cell

・骨髄間質細胞 Marrow stromal cell