チョコ効果 ◎◎%
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日本人の消費量は 一人あたり1.9kg(最近10年間でほとんど変わらない)
2012年の一年間の消費量/国際菓子協会・欧州製菓協会のデータ
ドイツ11.7kg スイス10.6kg イギリス8.7kg デンマーク8.0kg フランス6.6kg ベルギー4.5kg
カカオ豆は種皮(シェル)に包まれて胚乳部(ニブ)と胚芽が存在している
シェルとニブを分離する操作をウィノーイング(風選)といい
それを行う装置はウィノワと呼ばれる
ウィノーイングを行うには カカオ豆を破砕(粗砕き)する必要がある
シェルの形状は鱗片状 ニブは粒状
形状の差による気流中での挙動の違いを原理として分離が行われる
(ニブ粉砕用石臼ミルは メソアメリカで用いられた「メタテとマノ」とまったく同じ原理の装置)
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多様な歴史を持つ食べ物 チョコレート
歴史を貫く「一本の糸」
…「ココアバターがヒトの体温より少し低い温度以下で固まり,それ以上の温度で融ける」
ココアバターは,水分を除いてカカオ豆の栄養の半分以上を占めるので,発芽した豆が光合成を始めるまでの大事な栄養成分である.もしそれが固まればカカオの自生ができないため,カカオは熱帯でしか育たない.一方,温帯の環境ではココアバターは固まるので,「室温ではパリッと割れるが口に入れると融ける」チョコレートができあがる.チョコレートを食べてそのおいしさや健康に及ぼす効果を甘受するとき,この不思議な一本の糸」に思いを馳せていただきたい.
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溶融したチョコレート生地は 非ニュートン流体(擬塑性流体)としての流動特性を示す
チョコ製品や成型は その特徴を利用したものが多い
水やアルコールなどのニュートン流体では ずり速度にかかわらず粘度は一定
チョコレートは 流動曲線となる
チョコレート粘性の特徴の一つは 粘度がずり速度によって異なる点…ずり速度が小さい場合粘度は高く 大きくなるに従い粘度は低下
もう一つの特徴は ずり速度が0でも一定のずり応力を持つ点…それを「降伏値」という
板チョコは成型型(モールド)にテンパリングされたチョコレート生地を充填 冷却固化後に剥離して製造
充填後 型を激しく振動させて生地を隅々まで行き渡らせる必要がある
(非ニュートン流体で ずり速度が高くなるほど粘度が低下)激しく振動させることにより 生地に与えるずり速度を高め みかけ粘度を低下させ 同時に含まれる気泡を上昇させて生地から除去する効果も
適切な降伏値を有するチョコレート生地を用いることで均一な被覆が可能
(菓子素材の周囲をチョコレート生地でコーティング)
もしチョコレートに降伏値がなかったら(ニュートン流体だったら)その種のチョコレート製品を作ることは 「まったく不可能」
(生地が降伏値を持つ流動特性を示すことを利用した成型法「シェルチョコレート」チョコレートの殻-シェル)
厚い被覆 チョコレート層が次第に成長する チョコボール
装置を回転させることにより均一なコーティングが可能となると同時に 内部の製品がお互いに衝突を繰り返すことで表面が滑らかなボール状に(必ずしもテンパリングの必要がない)
テンパリングされていないチョコレート生地をスプレーすると「不安定結晶」が析出するが 製品どうしが衝突し合うことで局所的に摩擦熱が発生し 「安定結晶」への転移が生じるためと考えられている
『チョコレートの科学』2015
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(同書より)
原住民の飲んでいたものを 彼らの発音をもとに「カカウから作ったショコラトル」とスペインが伝え
ヨーロッパから広がるあいだに「ココア」に転じるなど
「チョコレートにかかわるさまざまな用語が不揃いとなっている」
木は 1753年 リンネ/スウェーデンの植物学者 が
「テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)」の学名をあたえ「カカオの木(caca tree)」となり
カカオニブを脱脂して得られる粉末を使った飲料については「ココア」が一般的
保存や運搬しやすいようコンパクトにまとめ お湯を注ぐだけで飲める「カカオ粉末」
すりつぶしたカカオニブの中から細かいカカオ粉末だけを取り出す「至難の技」を成し遂げたのは
その後 ジョン・フライ/イギリス により「食べるチョコレート」も発明された
ヨーロッパでは気温が低いため 磨砕と同時にココアバターが融けるように下から温める必要があった
「コンチェ」という機械(コンチング装置)
…機械の形状が「コンチ貝」に似ていることからつけられた名といわれている
同じコンセプトで作られたコンチング装置は現在でもスイスの街中にある多くのチョコレート店の店先に飾られている
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「古代メソアメリカ」 供給量が少なかった頃
(栄養効果 薬理効果だけでなく 強精剤としての効能を求めたり アチョテや唐辛子を入れ血の象徴として飲んだり)
カカオ豆は,メソアメリカで貨幣としても使われていた.カカオ豆の貨幣価値は時代や地域で異なるが,1545年のメキシコの文書によれば「七面鳥は雌が100粒,雄が200粒」であったという.メソアメリカには旧大陸のようなニワトリ,ウシやブタはいなかったため,七面鳥は重要な家禽であった.
カカオ豆は,貨幣としてのみならず,貢納・交易品としても使われた.綿,ジャガーの皮などとともにカカオ豆が低地から高地へ貢納され,メソアメリカで崇められた神聖な鳥,ケツァルの羽根や翡翠や鉱石が高地から低地へ貢納された.
『チョコレートの科学』